「なんか変な味する」
唇を離した後、幽助は顔をしかめた。
…キスの後に言うセリフじゃないわね、それ。
そんなことを思いながら私も眉間にしわを寄せる。
「何か変なモン食った?」
「拾い食いしたみたいな言い方、やめてくれない?」
それからポケットを探って包み紙を差し出す。
「これの味でしょ?今舐めてるし」
「『ハーブとカリンでのどスッキリ』…うげ。」
「のど飴嫌いだもんね、お子ちゃまは」
「うるせェ…つーか余計なモン食うんじゃねェよ。うあー、超マジィ」
そう言って幽助はむくれた。
味に集中してキスしてたのか、コイツは。
「じゃあ聞くけど、いつもの私は何味なの?」
そう尋ねてみると幽助はおもむろに煙草に手を伸ばした。
ゆるりと紫煙を吐くと、もったいぶった顔つきで呟く。
「…その日食ったメシの味」
「……」
やだなぁ…ちゃんと歯磨きしてんのに。
手近にあったクッションを抱きかかえる私を見て、幽助は吹き出した。
「嘘だって。歯磨き粉の味がする」
「〜〜〜もう!!」
「わっ!バカ、危ねェだろ!?火着いてんだぞ!!」
「知らないっ!!」
煙草を持ってるのに構わず、私は幽助にクッションを思いっきり押し倒した。
灰皿に器用に煙草を投げ入れる幽助に自分の唇を押し当てる。
強い苦味が鼻をツンと刺激する。
「…何味?」
幽助が子供のように尋ねる。
「ん?私の嫌いな煙草味」
意地悪くそう答えると同時に幽助の顔が少しだけ歪む。
「…遠まわしに『禁煙しろ』ってことか?それ」
「そんなこと言ってないでしょ」
「けど―――」
「いいのよ。これは『幽助の味』って割り切ってるから」
そしてまた唇を重ねる。
「煙草の味は嫌いだけど、あんたの味は好きよ」
私の言葉に、幽助は顔を逸らしてこっそりと笑った。
今さら照れてるの?バカね。
そして背中に腕が回された瞬間、その笑顔を見上げる形のなる。
ゆっくり降りてくるキスを受け止めた後、私は幽助の頬を指でなぞる。
いつの間にか、のど飴は全部溶けていた。
「ねぇ、今日はいっぱいキスして。カリンの味がしなくなるまで、ね?」
*花梨(夏五月)*
庭園などに植える落葉果樹。実は大きくいびつな楕円形、晩秋黄熟し優雅な香りを放つが果肉はかたい。
砂糖漬や果実酒にする。唐梨(からなし)。海棠木瓜(かいだうぼけ)。きぼけ。
螢子視点です。
久々にチュ-させた!やったやった!やったよ!!(←何を?)
10000HITSの感謝を込めて、お持ち帰りフリーです☆