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墨色リグレット





アイツはホントにバカでどうしようもなくて。

カエル持って追っかけてきたり人の頭にイモムシ置いたり
「メロンもスイカもおんなじだろー!!」とか言って
全っ然別物よ味の違いくらいわかるでしょこの単細胞が
だからテスト0点なのよ初めて見たわオール0点
鼻で笑ったらふくれっ面して帰って次の日熱出すもんだから
バカは風邪引かないってウソなんだと思ってお見舞いに行ったら
温子さんが「昨日帰ってくるなり急に教科書なんか読み出すから」って
なるほど知恵熱ね、とまた鼻で笑ったら本気で泣いちゃったっけ。

スカートめくりも毎日毎日ずっとされてて
これやったら私の攻撃がクリーンヒットするってわかっててやってるのかしら
あぁコイツきっとMなんだドMなんだそういうことにしておこうって思ったり
「黒いの履いてたら俺勃つな絶対」とか「襲っちゃうかもー」とかケラケラ笑うから
土手の上から突き飛ばしてやったりもして嬉しいだろMだもんねなんて言い訳しつつ
そういえばスカートめくるの私だけだわとかそれって私だけを『女』として見てくれてるってことかしらなんて
自惚れちゃったりするあたり私もどうしようもないくらいバカになってると思い知らされた。

こんなことするヤツにこんな感情抱いてて
それの名前を知ったとき『初めて』がアイツでよかったと思う反面
それ以来無意識に上がる頬の熱を隠すのに必死で
話し掛けるのにも少し気を張ってるなんて知ったら「何考えてんだよ」とか言われる気がして
そうやってこの繋がりが壊れて突き放されるのが怖かった。


それでも。


こんなことになっちゃうなら気付いたときに告げてしまえばよかった。
居心地のいいポジションなんかに縋らないで一歩踏み出せばよかった。


「幽助…っゴメンね」


身体中の水分が全部溢れてしまうんじゃないかってくらい泣いて。

アイツに最後に放った言葉と自分を呪って。

今日は絶対に忘れちゃいけないという誓いを背負って。



私より先に逝ってしまったアイツを呼び戻す術なんかないと
人の死がこんなにも力を奪うものなのかと思い知らされた日。









まさか生き返るなんて思わなかったあのとき。 20061212





 フリー作品、と言う事で、飛鳥様から頂いてきました。
 …思い出して切なくなりました…。

 
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